20世紀を代表する日本の石造建造物

 国会議事堂は「国産石材の標本箱、博物館」と称されるほど、日本で産出される石材を多用しています。設計や加工ももちろん国内で行い、その歴史的・文化的価値はたいしたものです。ひいては全国の卓越した石工職人が威信をかけて10数年費やして完成させたことも考え合わせれば“石工の偉業を示すシンボル”とさえ言うことができるのです。

 そもそも国会議事堂は、明治19年(1886)に時の内閣に臨時建築局が設置されて、議事堂の建築計画が始動しました。当初から「できる限り国産品を使用する」という方針が打ち出されていたようです。翌年に、建築予定地が永田町に決定され、明治42年(1909)には建築予定地の地質及び建築用土木・石材の調査が開始されました。大正元年(1912)にそれら調査が完了しましたが、その後大正7年(1918)に前調査の補足調査、未踏査産地の調査が行われています。大正9年(1920)の1月に地鎮祭、6月に鍬入れがおこなわれ、いよいよ起工。昭和2年(1927)4月に上棟式、そして昭和11年(1936)11月に竣工しました。ちょうど日清・日露の戦争や第1次世界大戦など政治経済が混乱を極めた時期です。計画始動から竣工まで、約50年の歳月が費やされました。

 石材に関する調査は、当時の大蔵省臨時議院建築局工営部(担当部長・矢橋賢吉博士)からの嘱託により、地質学者・脇水鉄五郎博士と三菱鉱業技師の小山一郎氏が実務を担当しました。国内で産出される約1200種もの石材について、石質や成分、組織、色調、光沢、斑紋、施工の難易、風化強度、採石可能寸法、見込み石量、産地の地理、運搬方法・運賃、原石価格などを調査したようです。その結果、細かく分けると花崗岩は3石種、大理石・石灰岩類が35石種、その他蛇紋岩などが4石種選定されました。またひとつだけ「黄龍」という韓国産の大理石が使用されていますが、これは当時の韓国が日本の植民地だったことが影響しているようです。










 残念ながら現在では、ところどころ改修工事がなされて外国産の石材や、石材以外の材料が使用されているようです。特に国会議事堂のシンボルである塔屋の屋根部分は10年ほど前に信楽焼きのタイルに貼りかえられてしまっています。ここでしか見られないような石材もあり、また「国産石材の標本箱」と呼ばれるくらいなのですから、やはり「国産の石」にこだわってほしいものですよね。

 国会議事堂はご存知のように、内部を参議院と衆議院に分けてつくられています。しかし実際にはこの両院の設計はまったくと言ってよいほど同じです。中央広場をはさんで左右対称につくられています。ここでは主に衆議院内部と中央部における石材の使用例を紹介します。繰り返しになりますが、参議院もほぼ同じ使われ方をしています。

 皆さんは国会議事堂の実物をご覧になった経験がありますか? 国会会期中は年末年始を除く平日のみ見学可能です。参議院別館(衆議院は原則として議員の紹介が必要)の議院面会所で申し込めば、衛視さんが案内してくれます。

 それでは、衛視さんはいませんが、議事堂内をご案内いたしましょう。きっと『石の魅力』にとりつかれますヨ!