“聖なる石”を家族で採掘
吸水率はどんな石にも負けない!
愛知・豊田市足助町で30年ほど前から採掘されている足助みかげ。採掘当初は「アラメ」の名前で流通を開始したが、すぐに採掘地名を採って「足助みかげ」に名前を変更し、今日に至っている。
現在は、嶺澤石材有限会社(愛知・岡崎市、嶺澤秀和社長)のみが、墓石材、建築材として原石を出荷していることから、最近は同社名を採って「嶺澤石」の名前でも流通している。
「吸水性はどんな石にも負けないと思っています。非常に硬い石ですから、光沢も普通のミカゲ石に比べ、三分の一の作業で本艶がでます。よって、コストダウンを図るには最高の石です」
と嶺澤社長は力説する。中国石製品を意識してのコメントであるが、もちろん、日本の他の石と同じように、中国材の影響を大きく受けた足助みかげ。ピーク時には月に一万切を出荷していたが、現在は月におよそ1500切の出荷量となっている。
聖なる石、聖なる地で
この足助町は巨石がとても多く、「磐座」「石神」などがあり、また環状列石なども見つかっていることから、古代から人々の生活の場であったことがわかっている。
嶺澤石材が採石している山の頂上にも、「秋葉さん」として火災予防の神として祀られている高さ六mほどの岩があり、広場の東端の見晴台は、岩がすり減っている感じで、相当古くから人々がここへ来ていたことが伺える(『愛知発巨石信仰』)。
江戸時代初期に徳川家に旗本として仕え、その後、曹洞宗の僧侶・仮名草子作家となった足助出身の鈴木正三が、山頂付近で修行をしたとも言われ、古くから信仰のある岩であったようだ。この巨石は同社にとっては「山の神」でもあり、嶺澤社長も年に一度はお参りをする。そして、こうした環境で仕事をしていれば自然と信心深くなるという。
「石は地球の歴史そのものですから、採石後も大切にしなければなりません。しかしながら最近の墓石の価格競争をみると、石が大切にされているとは思えません。もっと、石の本来持つ価値、神が宿る、自然の産物であることを説明していかないと。石の本来持つ価値ですね」
靖國神社・遊就館新館にも使用
この聖なる石は、平成14年に竣工した靖國神社・遊就館新館の外壁、敷石、エントランスホールの床石などに使用された。主にバーナー仕上げで使用され、本磨きとはまた違った味わいを見せている。
「遊就館で使用された石は、矢橋大理石(株)様へ、平成14年1月から5月までの間に約9,000切を出荷しました。日本を代表する神社で使用されたことは、とても光栄なことです」
京都や大阪の神社、また青森ねぶたまつりのねぶた小屋の敷石などにも使用され、「自分が採った石が日本各地で見られることも幸せ」とも嶺澤社長は話す。
家族が一丸となって!
ここ2、3年は嶺澤社長の奥様・昭子さんと2人で丁場に出る日々。注文が減った結果だが、贅沢をしなければ現状でもどうにかなる、との考えだ。何と、昭子さんは看護婦との二足のわらじで、病院で仕事を済ませてから丁場に足を運ぶことも日常茶飯事。発破の資格を取るべく勉強中でもあり、もはや、山職人である。
嶺澤社長のお母さんも丁場で仕事をしていた時期があり、その時に削岩機を使用していたことから、体がガタガタになってしまったという。だから、昭子さんには「削岩機だけはさせない」とやさしい一面も見せる嶺澤社長。一方で、「ひとつ間違えると命に係わりますので、作業中は厳しく接しています」。
嶺澤社長と昭子さんは、1男2女と3人の子宝に恵まれ、最近は中学校2年生になるご長男が仕事を手伝う日もあるそうだ。
「家族一丸となって仕事ができるのが最高の幸せです」
と嶺澤社長。しかし、今後の需要、また丁場での危険な仕事を考えると、子供が跡を継ぐことが本当によいことなのか、昭子さんと共に頭を悩ましているのも事実である。
アラメは最高の模様です
「石塔に小目、外柵にアラメを使えば、石塔はグッと引き立ちます。つまり、小目が主役であれば、アラメは脇役。アラメを模様の一つと考えていただければ、そのイメージは変わり用途も増えるはず。アラメは最高の模様です」
昨年のあじストーンフェア2005に出展したところ、名刺、サンプルはすぐに無くなってしまった。出展経費はかかるが、一歩でも、半歩でも、十分の一歩でも進まなければならない、との思いだ。
「国産にこだわり、国内加工にこだわる方、サンプルをお送りさせていただきますので、お気軽にご連絡ください」
山渡しで、切=3,000円から。聖なる石のお問い合わせは下記まで。
◎嶺澤石材(有)
愛知県岡崎市中伊西町字冷田2
TEL=0564‐84‐2857
FAX=0564‐84‐2880 |
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取材時(4月中旬)には、大きな発破を3回行い採り出した8,000切前後の原石が見られた。キズ・スジは若干あるが、使い方によっては9割5分が使用可能

上の大きな原石を割ったようす。割っても、まだ3000切はあろう(写真提供/嶺澤石材)

山頂にある秋葉さん

遊就館新館外壁には「カレドニア(カナダ産)」と共に使用されている

本館、新館前の敷石も、「カレドニア」と共に。大型バスが停車することから特殊工法が採用され、石厚は何と80ミリ

危険な作業もこなす昭子さん。ユンボは嶺澤社長が運転

嶺澤社長(左)と奥様の昭子さん
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