未来に句碑で「愛」を伝えよう!
史跡多い相馬の地で…
福島県北東部に位置する相馬地方。ここは廃藩置県が敷かれるまでの約600年間、相馬藩の領地として大きな国替えもなく、代々相馬氏によって統治されてきた。日本三大磨崖仏の泉沢石仏群(重文、小高町)ほか百尺観音(相馬市)、相馬家代々の五輪塔(小高町・同慶寺)など石に関連した史跡も少なくない。その相馬地方の西側にある飯舘村(人口6800人余り)で最も高い山が花塚山(標高918・5m)で、その山麓で採掘されているのが今回紹介する「花塚みかげ」である。
青葉みかげと同系統の白系中目の花崗岩で、グレーの長石がうっすら浮かぶ美しい石目を持ち、黒玉が少なく、石質は硬く、艶が褪めにくいのが特徴だ。現在の採石業者は鰍ヘなつか(斎藤賢次社長)のみ。先代社長が昭和49年に採掘したのが始まりで、開発面積は約10万uで約30年の実績を誇る。
二代目・斎藤社長にさっそく案内してもらうと、丁場から広がる視界は遮るものが何もなく、阿武隈高地の稜線が遥か遠くになだらかに続いていた。
「ここから青葉みかげを採掘している戦山を望むこともできます。紅葉の季節になると、遠くの山々が上のほうから徐々に色づいてくるのが分かるんです」と話す斎藤社長。この素晴らしい眺望を読者の皆さんにお見せできないのが残念である。
村役場は地元産石材の標本箱
ここ飯舘村は県の「地産地消」運動を推進すべく地場産業の振興発展に協力的で、行政が石材業を熱心に後押ししている。そのシンボルともいえるのが、平成5年に総事業費約10億4700万円を掛けて完成した村役場。かつて国会議事堂が日本中の石を集めて造られたように、この村役場の建設にも地元産の花崗岩がふんだんに採用されたのだ。青葉みかげ、八光石、大后石などが内外装及び外構工事などに利用されており、花塚みかげも内壁とエレベータの袖石などに利用されている。
また、この農山村のイメージからはちょっと想像しがたいのだが、飯舘村では「愛」をテーマに村づくりを進めており、その関連事業として毎年「愛の俳句」を全国より募集している。これは家族や恋人、友人、愛しい人への想いを俳句に託して表現するもので、選者に有名な俳人黛まどか氏を起用。これまでに4回開催しており、国内はもとより、海外からも申込みがあるようだ。
応募作品の中から選ばれた50点は村民の森あいの沢(キャンプ場や遊歩道を併設した林間広場)に愛の句碑として施工されるが、この句碑に花塚みかげが使用されたこともあるという。応募数に制限がなく、投句料も無料なので興味のある人はぜひ挑戦しよう。5ヵ年事業のため、今年で最後となる予定である。
福島生まれ、福島育ちの自社加工
しかし、行政の後ろ盾があるとはいえ、花塚みかげを取り巻く環境はご多分に漏れず厳しい。ここ数年の採石量は減少傾向にあり、現在は月産1700切前後、年間で約2万切程度という。主な用途は外柵で、時々、石塔の注文を受けることもあるが、「原石を中国に出すことは一欠けらとしてありません」とキッパリ。
工場には各種切断機や研磨機のほか、羽目の水抜き加工に便利な小型ワイヤソーなども設備されており、ヤクモノもできるだけ自社で加工し、完全な国産品として出荷している。
「今後も可能な限り採石と加工を続けていきたい」と話す斎藤社長。その意気込みに応えるように大口径の快音が工場内に逞しく響く。
◎鰍ヘなつか
福島県相馬郡飯舘村臼石字町96‐2
TEL=0244‐42‐0287 |
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夏は猛暑、冬期は寒さが厳しい採石場。多少の雪なら除雪してでも作業を続けるという


岩磐に穴を開けて発破の準備をする作業員


豪華な装いの飯舘村役場の玄関フロア。同村役場の内外装や外構工事には地場産の石材がふんだんに使われており、花塚みかげも内壁やエレベータの袖石などに利用されている

平成15年度の入選作で作られた「愛の句碑」(村民の森あいの沢)

工場での外柵加工のようす。細かい部分まで手を抜かず、一つ一つ丁寧に仕上げていく

高速回転のブレードを左右にゆっくりスイングさせながら切削していく大口径 |