美しい青の裏側には徹底した品質管理


商標登録済みの青石(商標登録2380852)

日本を代表する石材産地「石都岡崎」で、主に墓石用に古くから採掘・使用されているのが、「牛岩青石」「小呂石」そして今回紹介する「吉祥石」である(牛岩はバックナンバーを参照)。いずれも硬く、風化しにくく、高級品。磨きあげると青色が一層深まることから”青石”として知られる。

この吉祥石を採掘しているのがストーン吉祥求i加藤昭治社長)である。加藤社長は三代目、創業以来、同社1社だけがこの石を採掘している。業界内でもいち早く、平成4年に『吉祥石』を商標登録したのも注目だ。生産を管理している加藤勇治さんが取材に対応していただいた。

「やはり差別化が1番の目的です。特に中国などで青系の石が採れると、『新吉祥』『中国吉祥』などの名前で売り出すでしょう。石を知らない人には区別がつかず、混乱も生まれます。それですぐに色があせて、そうするとウチにも少なからず影響があるわけです」

さらに続ける。
「だから、そのような類似品との差別化。確かに類似品の方が価格は安いですが、ウチの石は価格で勝負しようとは思わない。あくまでも品質重視。自信を持って出せるもの、それが吉祥石なんです」

勇治さんは現在36歳。もの心ついた頃から山で遊び、中学を卒業するとすぐに、定時制高校に通いながら仕事を手伝いはじめた。まだ36歳とお若いが、すでに20年間、吉祥石を見てきている。

「小さい頃から、大きな原石がパカッと割れたり、大きな重機が軽々と石を運んでいるのを見るのが好きでした。だから自分から進んでこの道に入った。そっか、もう20年だ(笑)」

最近はちょっとキツイときもあるよ、と冗談を言うが、自分の仕事、自分の石に対する責任感や誇りはとても高い。


石の顔を見て採掘する

その責任感や誇りは、こんなところに見て取れる。聞けば、吉祥石には1級・2級または細目・中目などの区別がないと言う。「ウチが採掘元として、いい石しか出さないから等級は関係ないんです。吉祥はコレ、という感じで皆さんも知っていて、限定される」と勇治さん。それだけに原石の採掘には最大限の注意を払う。

「山では手作業が多いですね。バーナーとかワイヤソーは使わない。できるだけ石の顔を見ながら、丁寧に採っています。そうすると良いものが採れ、ムダも省ける」

採掘に最新の注意を払うのは当然のことかも知れないが、等級分けしないで一定の品質を供給し続けるのは大変なことである。しかしいまでも吉祥石が求められているのは、それが安定的にできているからでもある。


徹底した品質管理

さらにもうひとつ、同社では原則として原石のままでは出荷しない。これも採掘元としての責任感からだ。

「吉祥石はほぼ100%が墓石に使われます。よく石屋さんが工場で切ってみたら、なかにキズがあったという話を聞きますが、ウチではあらかじめ必要な寸法に六面切削して、ひと組ずつ出荷しています。15年くらい前からですね」

切削作業は、地元の切削専門の工場(柴田石材店)と提携しておこなう。これも“いい石しか出さない”という責任感のあらわれであり、また色ムラやキズなどのクレームを最小限にとどめることにもつながる。


出荷先を限定して「いいものだけを」

この徹底した品質管理は、販売先を限定しているところにも見られる。現在、同社が吉祥石(六面切削)を出荷しているのは、岡崎にある10軒程度の工場に限っている。つまり「吉祥石がほしい」と思っても、同社から直接仕入れることはできない。

「卸先を10軒程度に限定したのは10年ほど前からのこと。いずれも信用のおける工場です」

もともと一社で採掘しているので生産量は限定される。しかも青石という性質上、歩留まりが良いとは決して言えない。だからこそ、でき得る限りの品質管理をおこなっている。よく「岡崎ではもう石が採れない」などの声を聞くが、決して採れないのではなく、背景にはこのような事情があるのだ。採掘元としての責任を考えると、当然のことなのかも知れない。


いつまでも変わらぬ青を

「吉祥石の良さは、雨上がりにお墓参りに行けばわかります。雨が降る前と同じ青さを保っている。つまり水を吸わないということ。水を吸わないということは風化もしにくいということです。いつまでも変わらない美しい青を提供できるように努力しています」

勇治さんは最後に話してくれた。


◎ストーン吉祥
本社=愛知県岡崎市真伝町字吉祥25‐1
TEL0564‐22‐2517




〔上2点〕現在採掘している丁場と、丁場へ続く道



加藤勇治さん



切削専門工場(柴田石材店)と提携して必要寸法にカットしていく



六面切削された吉祥石の半製品。この状態で提携先の工場へ出荷する



基本的に原石のまま切削工場へ運ぶが、特殊なサイズのものや間知石などに使用する場合は丁場でも割る。上写真は原石を割る永田吉夫さん(73歳)。「永田さんは大ベテラン。私がこの仕事をはじめたときに、山のこと、石のことをいろいろ教わりました」と加藤勇治さん



永田さんが割った吉祥石