絶景を背に巨石と格闘!

「芝山石」は阿武隈高地の南部、芝山(標高819m)の国有林で採掘されている白系花崗岩である。芝山は福島県いわき市と古殿町、平田村の三市町村にまたがる芝山自然公園の中に位置し、頂上付近は約6000uの芝生を中心にキャンプ場やハイキングコースがあることから、そこから誰もが採石のようす(一部)を垣間見ることができるという全国でも珍しい採石場となっている。
近郊から産出される「紀山石」(山田石材計画梶jや「天光石」(閉山)と同系統の石で、別会社が1983年に採掘を始めた当初は「三葉みかげ(さんこうみかげ)」の名前で出荷していたが、諸般の事情により採石事業から手を引くことになり、挙。井石材工業(藤井宗明社長)がそれを引き継ぎ「芝山石」として再出発した。


G614とは似て非なる「芝山石」

外見は中国産のG614と極めて似ているが、墓石材としては明らかに芝山石に軍配が上がる。その適性において最も重要な吸水率を比較すると、G614の0.34に対して、芝山石は0.09となっている。この吸水率の低さは国産材の中でもトップクラスである。価格ではG614と何倍も開きがあるのに、今なお墓石材として支持されているのは、その吸水性の低さ、硬度の高さ(耐久性)、変色しにくい点など優れた特長があるからだろう。等級は、細目でうっすらと斑が浮かぶ〔特級〕と青味の濃い〔1級〕、そして粗目で赤味がかった〔2級〕とに分類される。


絶景と美味しい空気を堪能

さっそく採石場に案内してもらうと、中小の玉石に混じってひときわ大きな石の塊(ほとんど岩盤)がむき出しになっていた。採石はベンチカットによる露天掘りで、火薬をメインに扱っている。ここでベテラン3名と若手1名が巨石を相手に日々格闘している。年間生産量は約4000切。長尺モノで最大30尺くらい採れるが、技術的に運搬できるのは15尺(4尺角)程度となるようだ。
一方、山に背を向けると、そこには新緑に覆われた山並みが遥か彼方に広がっていた。集落や人工の建造物がほとんどない自然の山である。空気も澄んでいて美味しい。なるほど、ここに行楽客が訪れるのも頷ける。日本にもまだこんな景色があったのか、と再発見できる憩いの場であった。


可能な限り自社加工を主力として…

原石は地元福島や新潟ほか、東海から関西、広島辺りまで出荷されている。主な用途は墓石や外柵、建築用が中心だが、自然石を庭石や記念碑などに利用することもある。工場設備は100インチと88インチが各1台、50インチ2台、オフカット、ジェムカッター、手動研磨機のほか、ロボワンやサイドワンなど省力型の高性能機も導入されていた。レンゲの加工や地蔵、灯篭などは真壁の専門業者に発注するが、香箱や水垂れなどは可能な限り自社で加工する。設計作業には墓石用CAD「雅」(泣Nレア)を使用している。


寺院の濡れ縁や勾にも…

墓石以外の施工実績で多いのが、寺院関係の石工事である。須賀川市内にある時宗大通山金徳寺(大沼實善住職)の仕事では、基壇と共に濡れ縁や勾欄も芝山石で加工し、施工まで行った。濡れ縁はもとは松の木だったが、雨ざらしと直射日光を繰り返すうちに、歩くと床板が動くほど縮小・変形してしまった。そこで、同社が石で作ることを提案したところ、その案が採用されることになったという。まさしく、何代にもわたって末長く使うことを前提とした墓石や日本建築には打ってつけの石材なのである。



◎挙。井石材工業
本社:福島県田村郡小野町浮金山口279
TEL0247−73ー2101
FAX0247−73−2975







工場内のようす






金徳寺本堂の基壇と濡れ縁の石工事(須賀川市)





芝山石の墓石(同・金徳寺)