根強いファン支える天山みかげ

佐賀県で有名なものって何でしょう?
皆さん、チョッと考えてみて下さい。
―観光名所なら吉野ヶ里遺跡や虹の松原、温泉地では武雄・嬉野温泉、あるいは秋祭りの唐津くんち(12月2〜4日)などが一般多数の回答ではないでしょうか。他にはエッ何っ?天山?地酒?……ブッ・ブー (不正解の音)。実際、天山という銘柄の地酒もあるにはあるが、今回紹介するのは同じ天山でも銘石の「天山みかげ」です。
 

外部流出を禁じた「鍋島」

 
話は逸れるが、もうひとつ有名なのが「焼き物」。県内に有田・伊万里・唐津といった全国でも有名な産地がある。中でも有田は磁器発祥の地で、約400年もの間その伝統技術を受け継いできた。街中では窯元・美術館・資料館はもとより、有田焼の原料となる陶石の採掘場「泉山磁石場」、有田磁器の創始者・李三平(朝鮮に出兵した鍋島藩主が連れ帰った陶工)を祀る「陶山神社」などが観光名所になっている。

この陶山神社には染付け磁器でできた鳥居、狛犬、水甕があり、まさに石工のお株を奪う高度な焼き物技術を目の当たりにする。ちなみに江戸時代、備前一帯の焼き物は伊万里港から積み出されたことから、伊万里が焼き物の代名詞となった。そして現在、この地区の焼き物は大きく「古伊万里」「柿右衛門」「鍋島」の三つの様式に分かれている。
 
中でも興味深いのが「鍋島」だ(技法により色鍋島、鍋島染付、鍋島青磁などがある)。江戸時代は大名や将軍家、朝廷に献上されていた。日本で初めて磁器を完成させた鍋島藩は、より高い品質と技法の維持に努めるため藩窯を組織。1675年、有田から(伊万里市近い)大川内山に藩窯を移して、村の出入り口に関所を設け、その技法が他に漏れないようにしたという。国内ほか遠く欧州に数多く輸出された古伊万里や柿右衛門とは対照的といえよう。現在の伊万里焼はこの鍋島の系譜を引き継ぐ。
佐賀県を代表する銘石として…

標高1046メートルの天山は佐賀県のほぼ中央、県立自然公園の中にある。県のシンボル的な存在で、360度の視界が広がる山頂からは、南に佐賀平野と有明海、北に玄海灘が一望でき、天気が良い日は遠く阿蘇山や雲仙岳まで眺めることができる。

しかし「天山みかげ」はこの山で採れるわけではない。採掘場はその北部にある七山村、国道三二三号線から脇道に入った池原地区大屋敷にある。採石業者のひとつ天山石材(佐賀県備前町、代表者・田中正男、 0955‐53‐2639)を訪ねた。

丁場の面積は約四万u。数カ所でパワーショベルが忙しなく動いている。表層の土石を取り除き、石を選り分け、目的の玉石を掬い取っている。玉のサイズは結構デカイ。大きいものだと10トン以上ある。ここだけで年間2万切ほど採れる。外材に押されてピーク時の3分の1にまで落ち込んでいる。


人気は中国産だが、今のままで充分!

やはり九州でも売れ筋は中国製品。しかし天山を熱心に売る石材店も依然として多い。ブランドが定着している面もあり、国産の高級品となると真っ先に指名が掛かる。そういう根強いファンが少なくない。田中社長は「今のままで充分」という。「採石を始めてもう20年以上。どこを掘れば良いか、雨水の濁り具合などからある程度分かるようになった。見極めは競馬・宝くじより確実です」と余裕の表情。その顔は日焼けと土埃とで真っ黒だ。

最近は中国で加工してから再輸入される帰国子女の天山製品が一部にあるが、田中社長は「そこまでしたくない」と話す。昔、欧州に渡った伊万里は今「古伊万里」として珍重されるようになったが、社長にとっての天山はむしろ外部流出を禁じた「鍋島」であってほしいという思いなのかも知れない。



◎天山石材 
TEL=0955−53−2639