日本石巡礼 〜聖なる石に出会う旅・10〜 須田郡司


「不動岩」
ゆるぎ岳(熊本、山鹿市)





並若天満社の大将軍の石(大分、由布院町)





由布岳麓のタツ石(大分、由布院町)





船着き岩(福岡、星野村)





室山熊野神社の磐座(福岡、星野村)


  台風18号が九州に上陸した頃、私は熊本県山鹿市にいた。山鹿市郊外の山間には巨大な柱状の岩が数体、連なりながら立っており、巨大なメンヒルは「不動岩」と呼ばれる。かつて山伏がここに不動明王を祀り、修業していたことに由来するという。

 早朝、私は早速ゆるぎ岳を目指した。台風16号の影響か山への細い道には、小枝や葉が落ちていて歩きにくい。小1時間ほどで「後不動岩」と呼ばれる大岩に上った。下には不動岩も見え、岩柱群や山鹿市全体が一望できた。それにしてもこれら巨岩は、南方向へ直線状に並んでいて何か意図的に配置しているように見える。
 
 私は撮影を終え、山から下り不動岩前のお堂を参拝すると、突然、雨が降り始めた。台風18号による暴風雨であった。その夜、不動岩近くにフォトダマ号(軽バン)を寄せ、泊まることにした。夜になると、風雨はさらに激しくなり、車は揺れ、結局一睡もできなかった。朝方はその比でなく、さらに激しくなった。木の枝が折れ、飛んでくる。車すれすれに落ちた時はさすがに驚いた。「台風は巨大な龍だ」その時ふっと思った。

 そんな時、1台の車が近づいて来た。ある男性は暴風雨の中で、体をびしょ濡れにしながらお堂を参拝していた。その光景は、古来からつづく不動岩への信仰を感じた瞬間でもあった。

 大分県の由布院で、友人に紹介された石川英治さんにお会いする。石川は石に興味を持っていて、出会ったその日に、仲間を集めスライドとビデオの上映会を開いて下さった。その後、地元由布院のいくつかの石を案内していただく。

 並若天満社という古い神社の横に、「大将軍」という、おにぎりのような三角状の石がある。石には、四角く穴が彫られていて、中に丸い石が納められていた。「昔の人のセンスって凄いね!」と石川さんの言葉に頷いた。神主に聞くと、この石は牛馬の神を祭ってるのだという。動物にも神さまがいる、さすが八百万の神々の住む日本だ。小さな石神の中に、由布院の人々の牛や馬への思いが納められているように感じた。

 由布院の周りに点在する石を巡っていると、由布岳の存在感が迫って来た。石は神山としての由布岳と関係性を持ちながら配置されているのかも知れない。

 今から4年程前、「九州のサルタヒコ」と題するシンポジウムが由布院の空想の森で催された。その時のパネラーの一人でもある、福岡県の星野村の星の文化館や茶の文化館の専務理事をされていた坂元さんと阿蘇で偶然出合った。坂元さんは現在、財団法人阿蘇地域振興デザインセンターの事務局長を務められていたが、以前から巨石に関心を持っていて超古代の巨石文明ネットワークの研究をされていた。

 その日、星野村で坂元さんと落ち合い、いくつかの巨石を案内していただく。星野村役場の隣にある室山熊野神社の大鳥居を潜り、右手坂道を上ってゆくと三角おむすびのような山の頂上から丸い角のようなニョキッと突き出したように巨岩が見えた。この岩は「船着き岩」と呼ばれ、言い伝えで、大昔、岩の下まで海面が来ており、船をこの岩に繋いだという。

 坂元さんは、船着き岩とすぐ後ろにある三角形の権現山をセットしてイメージすれば「天の浮き船伝説」(縄文時代を記す古文書に、古代日本の万国天皇が、天の浮き船に乗って世界各地を空から巡航していたとの記述がある)と重なってくるという。

 室山熊野神社の境内の石段を上りはじめると、右側に立ち並ぶ巨岩に驚く。中には洞門のようなものもあり、神社の前方を取り巻くようにたたずんでいた。神社をお参りし、裏手に回るとそこにも、磐座と思われる磐があった。

 「神社の周りの巨岩をみると、岩と岩の隙間が意図的に配置され季節ごとの太陽光が計算して届くように作られているようなんです。冬至の日の光は、ちょうど神社の後ろにある磐に当たるようになってます」と坂元さんは言った。以前、磁石を使って巨岩と季節の太陽光の関係を調査して分かったそうだ。

 日本各地に点在する、人工的とも思える巨石の史実は、弥生期以降には登場せず、縄文時代の謎とされている。この室山熊野神社のように、古い神社ほどそのご神体は、巨石や山そのものである場合が多いのも事実である。

 坂元さんから、石だけを見るのでは無く、その石の空間的役割を見る必要性を教えて頂いた。

巨石の配置や役割などを想像しながら、私はさらなる石の謎と神秘なる魅力を感じつつ石巡礼を続けたいと思う。




■編集部より
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