はじめに
2つの地蔵岩(御在所山と礼文島)
2つの人面岩(三峰山と佐渡島)
立神岩と神威岩
石を立てただけの聖所空間
丸石
夫婦岩
割れた石・岩
揺拝石(岩木山と石鎚山)
奇岩と伝説(鯛島と親子熊)
石化伝承
洞門・洞窟
神奈備山
スリランカの旅@
スリランカの旅A
スリランカの旅B




日本石巡礼「聖なる石に出会う旅」
須田郡司オフィシャルページ
石を立てただけの聖所空間

石でも木でも、柱を立てることは、すなわち天と地をつなぐ行為のように見える。何かを立てることで、そこは特別な聖所空間になる。
 
日本の神社をみると、木の柱を立てることが聖所空間を作る神事となるものがある。八年に一度行われる長野の諏訪大社のおんばしら祭り、20年ごとに行われる伊勢神宮の「御遷宮」では、社の中心になる真の御柱を立てることが最も重要な神事とされている。また、日本では石庭を作る僧侶を石立僧と呼ぶ。石を立てる行為がすなわち禅の世界を表現する石庭作りを象徴しているのだ。
 
海外を巡っていると、ただ石を立てただけの聖所空間がある。アイルランドのタラの丘の石、インドネシアのスラウェシ島のランテの石などである。それら石の役割は、違いこそあれ聖所空間を作る意味では共通しているように見える。

ここでは、アイルランドとインドネシア、そして日本の石を紹介したいと思う。

アイルランドの首都ダブリンの北西にタラの丘と呼ばれる場所がある。映画『風と共に去りぬ』のなかの、スカーレットオハラのセリフ「タラに帰る」で有名な移民アイリッシュの心の故郷である。この地は、アイルランド人やケルト民族の血を引く人々が立ち帰るべき神聖な場所になっている。そのタラの丘に高さ130センチメートルほどの立石【写真左】がある。かつて、この石の前では古代アイルランドの王を決めるための重要な儀式が行われていた。
 
インドネシアの北、スラウェシ島の中部にランテと呼ばれる場所がある。ここには、石人像などいくつかの石の遺構があり、なかでも、原っぱに立つ高さ130センチメートルほど自然石は、ぽつんと佇み何ともいえない存在感だ【写真右】。地元のガイドによると、この石の前では様々な儀式が執り行われていたという。
 
日本の徳島県吉野川市の忌部神社にも立石がある【写真左】。この石は、青木の森と呼ばれる境内にあり忌部氏の祖先、天日鷲命の霊魂が鎮まる霊地と言われている。木の柵に囲われた中に高さ130センチメートルほどの石が立てられていて、忌部氏の神事に関係したものと考えられている。
 石を立てることで、目に見えない世界を感じることができる。墓地や信仰される磐座などが、それである。お墓参りや聖地巡礼は、日常を超えた世界とつながりを保つための行為として、人間に必要なことなのであろう。