はじめに
2つの地蔵岩(御在所山と礼文島)
2つの人面岩(三峰山と佐渡島)
立神岩と神威岩
石を立てただけの聖所空間
丸石
夫婦岩
割れた石・岩
揺拝石(岩木山と石鎚山)
奇岩と伝説(鯛島と親子熊
石化伝承
洞門・洞窟
神奈備山
スリランカの旅@
スリランカの旅A
スリランカの旅B




日本石巡礼「聖なる石に出会う旅」
須田郡司オフィシャルページ
割れた石・岩

三年程前、和歌山に住む友人に「桃太郎岩」と呼ばれる岩を案内してもらった。その岩は、三重県の山間部の岩床の川の中に、まるで人為的に置かれたように佇んでいた。高さ約3メートル、幅約10メートルくらいの大きさで、岩は真ん中からぱかっと割れていた。岩の前には、誰が付けたか桃太郎岩の看板が立てられていた。
 きっと桃が割れているような様子から桃太郎岩と名付けたのだろうが、友人はこの岩に特に伝承は無いという。桃太郎岩というより、岩肌を見ているとどこか巨大なジャガイモに見えた。近くに小さな滝が流れ、天を仰ぐと狭まった岩山から川のような空が覗いていた。友人は、この場所が好きで心地よい空間として紹介してくれたのだ。

 石や岩が割れた形は、様々な想像を掻き立ててくれる。その多くは自然の節理で割れたと思われるが、人為的に割ったとの伝承や伝説は少なく無い。日本でよく目にする割れた石(岩)は、日本神話に出てくる神々の伝承、そして、弁慶などの歴史上の人物に由来するものなどである。

 姫路市にある破磐神社の「割れ岩」には、次のような神話的伝承がある。その昔、神功皇后が麻生山から射た三本の矢のうち一本が西脇の大磐を三つに破り、これを吉兆として矢を祀ったのが、その始まりと伝えられる。伝説の大磐は、破磐神社の西南約2キロメートルの山中にある。この岩が姫路市西脇の破磐神社の発祥の地だと言われている。
 森の中に佇む「割れ岩」は高さ約5メートル、周囲約20メートル程もある大塊石で、注連縄が巻かれている。その岩を近くで見上げた時、人々が畏怖せざるを得ない存在感に満ちていた。

 奈良市の東北部の柳生の里の一角に「一刀石」と呼ばれる石がある。柳生新陰流の開祖、剣豪・柳生宗厳が修行中に、この山中で戦った天狗を切ったら石が切れていて、一刀石の名が付けらたという。岩の表面のえぐれた凹凸は、天狗の残した爪痕だという。また、近くには、天乃石立神社があり、名前の通り、周囲の巨石群を御神体としていた。

 割れた石・岩の存在は、桃太郎のように何かが発生するエネルギーを象徴している。一方、刀や矢も、何か目に見えない大いなる力を比喩しているのだと思う。