プロフィール


石の彫刻家の






阪急宝塚線の池田駅前で初めて浅香さんに会ったとき、失礼ながら「どことなく彫刻家らしくない」印象を抱いた。というのは、彼がいわゆる「イケメン」だったからである。体型はどちらかというと華奢で、茶パツにロン毛(長髪)、ピアスという身なりは、まるでビジュアル系ロックバンドのメンバーのようであった(外見で判断してスミマセン)。

そんな浅香さんは高校卒業後、バーテンや事務員など幾つか仕事を経験するも「本来、自分が求めていた、自分にしかできない仕事」を求めて「彫刻家になる」という明確な目標を持って、短大進学を決意した。入学すると、幾つかある素材の中で石にのめり込んだ。始めは石の加工に梃子摺り、表現の難しさに戸惑ったが、次第に慣れてくると疲労と共に爽快感を楽しむ余裕も生まれ、作ること=生きることの喜びを実感できるようになった。そして卒業した現在、自分が思い描いた通り「彫刻家」としての道を歩み始めたのである。

アトリエは、池田市の五月山公園の中にある。実は浅香さんを紹介してくれたのは、以前、本シリーズに登場した岩村俊秀さん。浅香さんも岩村さんと同じように市から公園の一画をアトリエとして借りているのだ。堺市の自宅からここまで車で1時間半〜2時間掛かるが、展覧会の前後や開催期間中を除いて毎日、通いつめている。時には照明を点けて徹夜で作業することもある。ここを活動の拠点にしてすでに1年半が経過した。

浅香さんの作品集を見せてもらうと、やはりそこにはビジュアル的に目を引く作品が多数ファイルされていた。石彫の表現法としては珍しく、花崗岩と大理石など異なる質感や色味を組み合わせた作品が多い。また一見不安定のようでも、物理的に3点で支持する構造の作品なども発表している。「支持体自身に具体的イメージを与え、原型的、想像的世界からの幻影を転倒させる。あるいはイメージを形態的な直感に移転させ、造形のベクトルを異に併せる」というのが浅香さんの基本スタンスだ。

「物でも心でもバランスが崩れると、様々な問題が発生します。だからバランスが保たれている状態というものを大事にしたいのです」と浅香さんは説明する。荒々しく男性的なイメージの花崗岩、そして繊細で女性的な大理石―そのふたつの対照的な要素を組み合わせることによって、それを敢えて表現しようというわけだ。学生時代は「耳」の造形を題材にした作品を幾つか制作したが、「今、思えば、そのとき三半規管が象徴するイメージの中にバランスという概念がどこかにあったのかも知れない」と振り返る。

ただし自分の評価や判断が必ずしも他人と一致しないことも自覚している。確かに異なる二つの要素を並べたときに、それを調和と見るか、背反と見るかはその人次第である。「しかし自分なりに今の作品には満足しているし、今はそういう自分をこのまま客観的に見ていきたい」と冷静に分析する。

一般的に個展やグループ展は作家本人が会場費を払って開くことも少なくないが、展覧会などで入選するとギャラリーからお呼びが掛かることもある。浅香さんは「人と違う作品を作ると割と入選しやすいので、ギャラリーから指名が受けられるよう頑張りたい。これからも自分で楽しく制作し、それを見た人にも楽しんでもらえる作品を作っていきたい」と浅香さんは話していた。目下、素材の可能性を幅広く探るべく陶芸の勉強にも励む毎日である。



◎浅香弘能
住所=大阪府堺市南田出井町3‐2‐13
TEL=072‐223‐8185

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「Dreamer -夢の跡-」 大理石、黒みかげ H70×W45×D40p



「G-Morphism」(形態主義学) 大理石、黒みかげ H90×W120×D80p



「Efforts Human -Mr.T-」(努力する人)大理石、黒みかげ H105×W85×D35p