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「石彫はマイナス(引き算)の作業ですよね。彫ったり磨いたりして、かたちをつくる。だから限界が生じるし、表現しきれない部分もある。でもぼくは石を介してプラスの仕事をしたいと思っています。当然、石を彫ること自体はマイナスの作業ですが、結果的にプラスのモノをつくりたい。つまり、石と空間との融合、石という素材で空間を演出することです(立体造形)。作品がただそこに置いてある石に終わるのではなく、ぼくの作品に誰かが何らかの方法で接触できる仕事をしたい。だから造園家とのコラボレーションや、石と違う素材を組み合わせることで、人間と石との距離を近づけようと考えています」
石を中心とする造形作家、藤岡智紀さんの作品は、何だかとてもおもしろい。一般的な具象的な石彫作品にはなかなか見られないものが、藤岡さんの作品には見えるような気がする。石自体も要所に赤・青・黄色の原色を塗ることで、その他の部分の割肌の風合いも活かし、しかも鉄製のボルト(特注)で組み合わされ、把手のようなものも付けられている。
「石の持つ素材としてのエネルギーは強大で、それが人との距離感になる。色を入れたり、ボルトを使用することで、その力を中和し、石をもっとよく(身近に)感じさせることができるんです」と藤岡さん。さらに「ぼくは作品によって鑑賞者とコミュニケーションを取りたい。作品は公園などの公共の場に置かれ、自分の手を離れたときに初めて作品として成立するもの。だからコミュニケーションの輪はぼくの知らないところで勝手に広がる。そう考えると、もっと分かりやすいモノをつくるべき。コンセプトばかりを重視し複雑化するのではなく、単純で、しかもみんなの記憶の中に眠っているようなかたちをつくりたいんです」と話す。
藤岡さんの作品をおもしろいと感じたのは、それが単純明快で、分かりやすいからだ。藤岡さんは「作品を通じて、何かを必ず伝えたい」と話していたが、その「何か」だってそんなに難しく考える必要はない。ただ単純に「おもしろいなあ」「触ってみたいなあ」「動くのかな?」「どうなってるの?」と興味を持たせること、それが藤岡さんの言う「何か」の基本的な要素となっている。
「ぼくは子供の頃から、モノを組み立てて行くのが好きでした。引き算ではなく、プラスの作業ですよね。例えばレゴ・ブロックみたいに(笑)」
そう言われると、赤・青・黄色の色づかいはレゴ的な懐かしさを感じさせる。そして石をいくつものパーツに分け、それをボルトを使って組み立てたような作品は、まさにプラスの作業。しかも組み立てて出来上がったものは缶詰をモチーフにしていたり、どこかで見たことがあるかたち。で、巻き取り用の把手が付いていたりするから、つい触って動かしたくなってしまう。まさに藤岡さんの思うツボ。
でも、藤岡さんの作品に感じる分かりやすさは、色やボルトやかたちなどの視覚的な効果だけではない。「ぼくの場合、作品のスケールはすべてぼく自身の身体が基準になっています。例えば、この部分は自分の手二個分とか…すべてのパーツをそうやってつくる。見えない部分の話ですが、そうすることで自分のメッセージをより強く発しています」。
だから人によっては、なぜか藤岡さんの作品が嫌い、と言う人もいるかも知れない。それは藤岡さんと鑑賞者のスケールがどうしてもかみ合わないという無意識のところでの不快感のせいだろう。「でも嫌いと思われるのもうれしい。それもコミュニケーションのひとつですから。それよりも『分かりづらい』と言われる方がもっと辛いですね」。
◎藤岡智紀(自宅)
滋賀県大津市大平2丁目12-23
TEL.077-534-7377
◎アトリエ
住所=滋賀県近江八幡市北津田町
※写真の説明
1番上から「作品組み立て中の藤岡さん」
→「これらのパーツ(石製)をボルト等で組み立てると…」
→「ハイッ 作品『ニワにワニ』の完成(70×180×70p、第33回京都彫刻家協会彫刻展出品)」
→「作品『石缶』(80×100×90p)」
→「作品『美術環』(40×60×120p、第56回全関西行動展出品」
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