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東北の山形県には東北芸術工科大学(1992年設立、以下=芸工大)がある。そこの芸術学部には美術科があり、美術科内には彫刻コースがある。そこで1学年20人(定員)が彫刻を学んでいる。1年生では基礎演習として、塑造やデッサン、レリーフについて学び、2年生では金属・石・木といった実材からの立体づくりを学ぶ。それから3年生、4年生は自主制作として、素材や形態、サイズを問わずに自由に自己の表現を模索し、卒業制作へと向かう。
…話は少しさかのぼり、3月下旬のある日の午後、銀座のとあるギャラリーで開かれていたある石彫家の個展で、前田耕成さん(二科会会員、石彫家)に約半年ぶりにお会いした。その時に、色々な偶然が重なって、前田さんが助教授をつとめる芸工大に伺える予定がたったのである。ちょうど大学は春休み中で授業は休みなのだが、前田さんは美術科の坂田啓一郎助手に連絡をして、「可能な限り学生を集めるように」と重々しく指示している。坂田助手も「任せてください!」と快諾してくれていたようだ。何ともありがたいお話である。
と、感謝しつつ芸工大へと向かった。まずは坂田助手にお会いする。坂田助手は芸工大の第1期卒業生で現在29歳。本来は木彫専門だが、美術科助手としてすべての授業をサポートするため学生にとってはアニキ的存在の人だ。
「うちはゼミ制をとってないんです。ゼミに入ると、その先生の影響力が強くなりすぎて、学生の作品が先生のモノと似てきたりする。これはあまり良くないことですよね。芸工大はあくまでも学生たちに幅広くチャンスを与える場所であって、だからまだ早い段階で『石彫』とか『木彫』とかを決めて欲しくないんです。先生方もそういうスタンスで授業を進めていますよ」
なるほど、とメモを取りながら彫刻実習が行われている悠創の丘へと案内していただく。石彫用の実習室へ行くと、すでに4人の学生が石に向かい合っていた。その1人、北海道出身の渡部陽平くん(4年生)は少し照れながら石の魅力について話す。
「はつった時の快感、ものすごく気持ちが良いんですよ。それに自分のリズムで作品をつくれるから、実感がわきますね。石に比べると、金属などは作業的に感じます」
その話を聞きながら、他の3人はうなづいたり、ちょっと冷やかしてみたり…実に和気あいあいと彫刻を学び、石に触れている。4人とも「まだ石(石彫)をずっとやろうと決めたわけではない」と言うが、「でもいまは石にはまってマス!」とも言う。その言葉通り、石に向かってノミを構えたときの表情は真剣そのもの。1人ひとりの制作写真を撮らせていただいたが、ファインダー越しのその顔、その姿勢はもう石彫家然としている。石材加工用の大型機械などが整っているとは決して言えないし、道具・工具類、ましてや石までも学生自身が負担するという環境の中、彼らは与えられたチャンスを活かして、だんだんと石の魅力を感じ始めているのだ。
今年3月までの芸工大彫刻コースの卒業者は約120名。そのうち現在、石彫家として活動しているのは5、6名。卒業してからの彼らの最大の難題は「アトリエをどうするか」ということ。読者の皆さん、石彫家志望の若い人たちが来たら、工場の片隅でも良いので快く貸してあげてください。
◎東北芸術工科大学
山形県山形市上桜田200
TEL.023-627-2171
http://www.tuad.ac.jp
※写真の説明
1番上から「助教授で石彫家・前田耕成さんの制作途中の石に、恐る恐る“いたずら”をする皆さん。実に和気あいあいとした雰囲気で、石彫・石の魅力に触れている」
→「制作中の渡部陽平くん」
→「制作中の二神勲くん」
→「芸工大“悠創の丘”の彫刻実習室を見下ろす」
→「石置場にて談笑中の学生たち。石は小松石や伊達冠石を採掘元から格安で提供していただくことが多いという。卒業後のアトリエの問題等を含め、業界から彼らをサポートできることはたくさんある」
→「左から、二神勲くん(4年生)、松岡圭介くん(大学院生)、坂田啓一郎さん(美術科助手)、菊地尚くん(4年生)、渡部陽平くん(4年生)。学生たちはまだ表現の素材を『石に決めたわけではない』というが、現在はだんだんと『石の魅力にも気づき始めた』ともいう。助手の坂田さんは『芸工大は学生にチャンスを与える場所。これからゆっくりと自分の道を決めて欲しい』と話していた」
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