プロフィール











自作の石仏をただ並べるだけじゃつまらない、今から開催初日までの百日間で千体彫る「千体石仏展」というのはどうだろう。彫刻では初の個展だし、どうせなら面白い企画で、とこのイベントを提案した。かの円空(1632?〜95)は一生のうちに仏像を12万体造ることを発願し、また木喰五行上人(1718〜1810)も千体残したという。いつか自分もそれに挑戦してみたい、という気持ちもあった。休みなしで一日に十体彫ればいい。何日かロスがあっても、別の日に少しずつカバーすれば十分間に合うだろう、と踏んでいた。

しかし実際始めると、けっこう大変だった。本業を半日で切り上げ、残り時間を制作時間に費やした。途中で挫折しそうになったが「今さらやめるわけにはいかない。やれるだけ頑張ってみよう」と奮起、ペースを取り戻しどうにか間に合った。今号の表紙はその時の作品だ。 「最後までやり遂げたことが今の仕事に大きくプラスになった」と振り返る。

彫刻店は意外にも熊本市内のど真ん中、熊本城の近くにある。西合志町にも工場があるが、等身大の大きさまでならここで事足りる。交通量の多い通りに面すので、ガラス越しに制作のようすを物珍しそうに眺める人も少なくない。今どき市街地で、しかもこんなに間近で石工の仕事が見られるのはここくらいだろう。町中に突如現れた新鮮な空間だ。

しかし、目を引くのはその理由だけではない。店先に並ぶお地蔵さんが実に可愛らしい。その中に原石の形をそのまま生かした顔だけのものがある。石の中から自然と顔が浮き出たような作風だ。その優しい表情を眺めていると、心が和み、安らかな気持ちになる。時間に追われ、ストレスが溜まるばかりの人々には、まさしく一服の清涼剤となろう。

「仏像は顔が命ですから」と石崎さん。「感性と表現力では中国製品に決して負けない」と自信満々だ。しかも誰もが手軽に買えるように値段を安く抑えている。一体が2、3万〜せいぜい5万円くらいというから驚く。「最近はお地蔵さんをインテリアとして室内や庭先に飾る人が多い。完全な立像より、原石のお地蔵さんの方が人気がある」という。

県内では宇土市で8月に開かれる「うと地蔵まつり」が有名だ。宇土市では商店街の活性化事業のため昨年1月「お地蔵さん工房」を開設したが、これが地元でちょっとしたブームになっている。石崎さんはその講師としても活躍する。市内網津町特産の馬門石を材料にお地蔵さんを彫る市民講座で、その受講生の制作指導に当たっている。

「受講生の年代は20代から50代まで、半数は女性です。お地蔵様を6週間(6回)掛けて好きなように完成させます。このような市民講座は県内でここだけなのか、募集の度に定員がすぐ埋まってしまいます。福岡や佐賀など県外から通う人もいて、二度、三度と受講する人もいます」と話す。

田口信夫市長も工房の1期生で、市長室には自作のお地蔵さんが飾ってあるという。「制約がなく、自分の思い通りに作れるのが面白い」「自然と自分の気持ちがこもるので作っていくのが楽しい」と受講生に好評だ。この1年間で約60人の仏師が誕生した。

◎石崎仏像彫刻店
 住所=熊本市上熊本2‐12‐20
 TEL=096‐353‐1657
 http://www8.ocn.ne.jp/~jizou/