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「石は、私にとって不思議な存在。黙っているけれど、しっかり自己主張もする。寡黙に身を任せながら、最後の一線はなかなか許してくれない。どんな色にも染まりそうなんだけど、一瞬のうちに身を翻して拒絶したりする。それだけ彫刻家にとっては、こちらの力量が素直に試されてしまう難しい素材です」
神奈川県津久井郡相模湖町の山間にある「アトリエ風」の山小屋風のストーブに当たりながら、温かい目をした彫刻家岩崎幸之助さんは石の魅力についてそう答えてくれた。
この「アトリエ風」は一九八三年に彫刻家大成浩さんを中心に設立され、現在は15名の石彫家によって共同運営されるアトリエである。メンバーひとりひとりが「ここは単なるアトリエ(仕事場)ではなく、石彫を通して社会に心のゆとりの大切さを訴えかけて行く場所」という強い信念を持って、様々な活動を展開している拠点にもなっている。
1986年から参加した岩崎さんも、その強い信念のもと創作活動に励んでいるひとりだ。
「彫刻はただ創って並べておくだけでは、ただの置物にすぎない。大切なのは見る人、触った人の心に働きかけること。そういう作品を創りたいと、いつも悩み続けています」
石は不思議で難しい素材だけれど、そこに詰め込まれた存在感をうまくかたちに表現すれば、人に優しさや温かさといった心のゆとりを与えることができる。岩崎さんの言葉の端々からはそんな想いが伝わってくる。本来「お墓は心の拠り所」と訴えかけてきた墓石産業と、はっきりとした共通項が見出せた。
そんな岩崎さんが現在、定期的に取り組んでいるのが、子供を対象にした石彫刻や作家とのふれあいの場づくりだ。これは国画会彫刻部の事業であるが、岩崎さんは運営の主要な部分を任されている。
「子供はゆっくりと温めながら育てるべき。現代社会では学ぶことが多すぎて、急かされながら育ってしまう。これは親御さんにも言いたいことだけど、一つのことにゆっくりと心や時間をかけて取組む喜びをもっと伝えてほしい。石彫も同じで、浮かんだイメージを自分の心の中で大事に温めながらかたちにして行く。そうした喜びを子供たちの五感に直接訴えかけたいと思います」
岩崎さんの最近の作品には白みかげ石が多い。
曰く「白系の石はしっとりとやわらかな印象があるが、なかなか存在感を持った作品になりにくい」からだ。自分の力を確認するためにも、あえて白みかげに挑戦する。現在のテーマは「水」。岩崎さんにとって石と同じように不思議な存在の水を、石の不思議さを借りて表現している。それらの作品は昨年10月から11月にかけて神奈川県民ホールで開催された、アトリエ風主催の「石空間展4」にも出展された。
「自分の心の中の出来事を創作のテーマにすることが多い。その作品に共感してもらえれば、心と心のつながりを持てたとのではないかと、とてもうれしいからです。また幼い頃のトラウマをテーマにし、それを克服したこともありますよ(笑)」と岩崎さん。
最後に石彫を始めたきっかけは、と問うと「一通り色々な材料を試したけれど、石を彫ったらなぜかうれしくて夢中になれたから」という答え。
そう、その気持ちこそ、私たちが忘れてしまいそうな「石の感触」なのではないでしょうか?
◎岩崎幸之助
自宅=東京都八王子市廿里町46‐8‐203
TEL0426‐62‐9483
◎アトリエ風
神奈川県津久井郡相模湖町寸沢嵐2520‐2 |