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石の彫刻家の | ![]() |

きっと誰もが訪れたことのある、京都が誇る世界文化遺産「鹿苑寺・金閣寺」。そのすぐ裏手にある小高い山の斜面には閑静な住宅街が広がり、その中に彫刻家、高橋克明さんの自宅・アトリエがある。 「20年くらい前までは何もないところで、その頃に移り住んだのが私のところ。だから最初から石彫をやっていたので近隣の皆さんには理解をいただいています。こちらも気を遣いながら制作していますが」 大好きなジャズのレコードを流しながら高橋さんはそう話す。失礼になるが、とても華奢な体つきで、レコードに耳を傾けながら話している姿からは「石を彫る」という姿を想像しづらい。 「なぜ石を主体にして表現するのかというと、石を彫るのに力がいらないからです。はつるときもセットウをうまく使いこなせれば力は必要ない。体重? 50キロ前後ですよ(笑)。木や金属などいろいろな素材を試して、結局は一番楽な石を選んだんです」 そんな話をしながら作品集を見ていると、高橋さんの作品は石のパーツを組み合わせた幾何学的なものが多い。割肌は残しているが、石の面はきっちりと磨いている。そのピカピカ光る石肌が、余計に幾何学的な印象を強めている。 「大学に入るまで美術・芸術にはまったく無関心。私は理数系の人間で数学が大好き。冗談で、父は定規、母はコンパスと言うくらい(笑)。だから幾何学的なかたちになるんだと思います」 数学好きの高橋さんが高校卒業後に、いまの奥様に誘われてある木彫家の個展を見に行った。そこでまさに幾何学形態の木彫作品を目にして「こんな美術があるのか」と驚き、その作家村上泰造氏が教授をつとめる京都精華大学美術学部に入学。石彫の世界へと進むことになった。 「最初は幾何学的なかたちを組み合わせることにおもしろさを感じていたんですが、いまはかたちはどうでもいいと思うようになった。『新しいかたち』というのは世界中を探しても、もう存在しないのではないかとも思う。だからかたちにこだわるより、その中にあるもの、例えば私だけの○や△、つまり表現方法にこだわりたい。自分だけのオリジナル。かたちではなく、いままでに無い『表現』を常に模索しています。でもきっと死ぬまで見つからないでしょうね」 そう話しながら高橋さんは木でつくったブロック・パズルのようなものを取り出した。ドーナツを四等分にしたようなパーツをいくつか組み合わしたもので、高橋さんはそれらをクイックイッとまわしている。そうして「ほら!」と笑ってできたかたちを見せてくれた。普段もジャズを聴きながらリラックスした状態で、このパズルをいじっている。そうしてできたかたちが、つまりは高橋さんの石彫作品のヒントとなっている。 「デッサンはしません。そのかわりに設計図を書きます。つまりその段階での完成品がもう見えているんです。正直言ってつくることは嫌いなんです、完成が見えていますからね。石に向かってつくり始めると、それは創作というよりも単なる作業なんです。設計図通りにつくるという作業。だから私にとっての創作とは、設計図をつくる前の段階で、表現方法を考えること。この段階が一番楽しいし、一番苦しい」 ところで高橋さんはなぜ石を磨くのか? ひとつの答えとして、幾何学的な形態をより強く意識させるためという発想は誰でも思い浮かぶであろう。でも高橋さんにしか分からない理由もある。曰く……。 「自分の苦労を見せたくない(笑)。それとかたちそのものを消したいという思いもある。でも彫刻はかたちがないと成り立たないから、自分の中で矛盾しているんですよね。これも彫刻のおもしろさかな」 ◎高橋克明 京都市北区大北山原谷乾町25−34 |
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![]() ![]() 【上】アトリエで木製のブロック・パズルを使って表現を探る高橋さん。下はそのパズル ![]() ![]() 作品『接吻』(部分)。第60回行動美術展に出展 ![]() 作品『テーブルの足になったメドウつ石』(第43回北陸中日美術展に出展) ![]() ![]() 上2点、作品『La.線』 ※上三点の写真は高橋さん撮影・提供 |