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今回の彫刻家は、本連載初の女性作家となる小関直子さん。肩書きには「(有)大蔵山造形研究所の代表者」とあるが、一体どんな人だろう。小関さんとは電話で待ち合わせについて話したぐらいで、顔立ちや年齢など詳しいことは聞いていなかった。初対面ということでいささか緊張したが、JR白石駅を降りたところで視線が合い、照れくさそうに近づいてきた女性が小関さんだった。
小関さんの巧みな運転で、伊達冠石の採石場がある大蔵山を案内してもらった。研究所の設立は七年前だが、小関さん自身は十年前から大蔵山に通っている。自宅よりここにいる時間の方が長いそうで、伊達冠石のことはもちろん、大蔵山のことなら何でも知り尽くしている。実は三児の母であるが、すでに子育てからは開放されていて、今の仕事に全身全霊を傾ける毎日である。
ここでは90年に設立した「大蔵山工房」としての活動が大きな柱になっている。植生調査を兼ねた山の観察会、演奏会、星を見る会、山菜取り、畑実習、草木染め、紙すきなど…大蔵山を活動拠点として「自然と人間の共生を模索する」ことがテーマであり、様々な活動を通じて周辺地域との交流を図ってきた。地域共有の財産として山を開放し、その恩恵を皆で分かち合おうとの考えが根底にあるようだ。アトリエでは創作の場として可能な限り作家を受け入れており、一年を通じて全国・海外から多数の作家がここを訪れる。そのネットワークを生かして、93年以降は白石市「白石・野外彫刻展」の企画運営にも携わってきた。
同研究所は、非営利目的の大蔵山工房と一線を画し、経済活動を伴う自治体や民間からの要請に対する受け皿として機能する。山元の山田政博社長(山田石材計画(株))と建築士の小田島正仁氏がパートナーだ。建物は採石場跡地の一角にある二階建てのプレハブで、内側のパイプはむき出し、天井は雨水が染み込んで板が反り返り、パソコンは雨漏りを避けながら使用する状況だ。お世辞にもキレイとはいえないが、何かモノを考えたり、創作するには最適な環境のようだ。イスの上では猫が気持ちよさそうに眠っていた。
そして、もう一つここでの大きな仕事が「採石場の修景計画」だ。山田、小田島の両氏と共にテーマを決めて、毎月一回ミーティングを開く。門柱ひとつ作るにしても、互いに意見を出し合い、とことん話し合う。これまでに跡地の緑化復元作業を造形的な作業に置き換えた「大蔵山ワークキャンプ」を三回開催。最近は不要になった石塔の供養塔や水場を作り、現在は「山のセンターハウス」の建設が進んでいる。
大蔵山は四季の変化だけでなく、一日の中でも時間ごとに違った表情を見せてくれる。「一年中、朝から晩まで伊達冠石の丁場を前にして仕事ができるなんて幸せです」と小関さん。人工的に削った山肌から天然の松の木が育つのをふと目に止めたりして、自然の力強さを再発見することが多い。その驚きが創作現場でのヒントになることもあるという。
作品はどれも「山の恵み」が大きなテーマだが、もちろんそれは物理的な恵みだけではない。大蔵山での活動を通じて得た様々な感動や喜び、人との出会いなど小関さんの心の宝物であり、それに対する感謝が込められている。また「石は重いもので、一人では何もできない。石を切り出すのも、運ぶのも、設置するのも、常に共同作業が必要になる」ともいう。潜在的に石には人の心を引きつけ、人を集める不思議な力があるようだ。それこそが石の魅力なのかも知れない。
◎(有)大蔵山造形研究所
住所=宮城県伊具郡丸森町大張大蔵字小倉14‐3 |