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「今、石で家を造っているんです」と聞いて、すぐ思い浮かんだのが人気ドラマ「北の国から」だった。田中邦衛扮する主人公・黒板五郎(通称・ゴローさん)は、畑から出てくる石ころを拾い集め、それを積んで建てた家に住んでいる。「まるでドラマみたいですね」と言うと、松田さんは少しおどけて「そんなんじゃないですよ、ボクのはもっと俗っぽいんです」と照れくさそうに答えた。意外にも子供の頃は「自分にはどこか欠如した部分があって良い大人になれない。きっと反社会的な人間になる」という劣等感があったという。
そんな松田さんの作品は、発表の場によって同じ作家とは思えないほど表情が異なる。1つは主に個展向けの作品で、全体的にソリッド系(がっちりした固体)のものが多い。この場合、「重量物で耐久性に優れ、重厚で存在感がある」という石に対する一般的な認識を覆すべく「ひ弱で、もろく、刹那的に」表現する。これは石に内在する空間性や二つの対極的な性質の中間部を探る試みでもある。たとえばワイヤソーを使えば石を3p厚くらいまで切れるが、さらにグラインダーを使って「これ以上やると石がイテッとヒビ割れするくらい」ギリギリまで薄くして、立体を極限まで平面に近づける。その結果、最終的には9o厚になるというから驚きだ(=表紙写真)。
もう1つは公共工事など外構に絡んだ作品だ。特種製紙ペーパーアートミュージアム(静岡・三島市)のストーンワークで、旧建築物の外壁に使われていたコンクリート片を布団カゴに入れ、それで土留めの擁壁を造った。材料費はカゴ代のみで、廃材の再利用にもなるスグレモノだ。また歴史国道案内休憩施設「倶利伽羅峠の郷・埴生口」(富山・小矢部市)では、同じ工法を用いて白黒ふたつの石でデザインした案内施設を建てた。ここは以前の源平合戦の地で、ふたつの石は源氏と平氏であり、さらに時間という概念を含む石を積んで、そこに白→黒→白という色調の流れを与えることで歴史や時間の変化というものを表現した。個展開催時などに役所に足を運び、後に公共の仕事を請け負う中で建築士らと知り合い、この分野の仕事を開拓した。最近の公共工事は芸術作品に対する予算付けが難しく、こうした芸術性を備えた実用的な施設〈アート建築〉が増えつつあるという。
そして3つ目が、デザイン墓石など趣味的な作品。歴とした仕事ではあるけれど、あくまでも作家として請け負うため時間的な制約を受けないことが条件となる。今作っているのは、ある社長さんから依頼されたもので、磨いた面が1つもない全面のみぎりのお墓だ。苔むして趣きが増すのが狙いであり、松田さんは「このお墓は建てたときが一番悪い状態で、時間の経過とともに段々良くなる」と説明する。
現在建設中のアトリエは、先の布団カゴの工法を外壁に採用したものである。建物の基本構造はペットボトルを再生したH型FRPの構造材を使った屋根架構で、その周わりを組石構造の外壁で囲む計画だ。外壁部は8m×16mの大きさで、壁厚80p・高さ50pのカゴを六段積んで3mの高さにする。カゴ内の外側に栗石を積み、中心部に砂利を敷いて気密性を保つようにした。施工業者を入れず、基本的には本人のみで、数人の軽作業で最後まで造る。「外壁はまだ半分の3段しか積んでいないが、その栗石と砂利石の材料費は6万円くらいです」と話す。来年春〜夏くらいに完成する予定である。
◎アトリエ・ウンターベルグ
住所=茨城県新治郡八郷町大字大塚2500
TEL=0299‐43‐2878
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