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今回紹介する石彫家は六田貴之さん。埼玉県坂戸市にある12名の芸術家(石彫は5名)で共同運営されるスタジオ「バンクハウス」(代表=新谷一郎氏、石彫家)を拠点に制作活動に励んでいる。六田さんの作品は、具象彫刻。いわゆる人物像である。でもきっと皆さんが想像するような、やわらかなタッチの人物像ではない。白大理石を使用した上品なものでもない。それが六田さんのつくる人物像である。
その第一印象は、どこか無骨。だけど繊細。
実は六田さんの人物像は、二〜三種類のみかげ石を組み合わせて創造される。例えば顔をインドの赤で彫り刻み、胴体を黒みかげでつくる。そのふたつのパーツを埋め込んで組み合わせるのだ。無骨と感じたのはやはりそのみかげ石のパワーだろう。また上半身だけの作品で、必ずしも腕が彫られているわけでもないことも影響しているかもしれない。よくある美しい人物像を期待して見ても、あっさりとその期待は裏切られてしまうのだ。しかし顔の表情の細部に至るまで丁寧に彫刻し、組み合わせ、色にアクセントを持たせることで繊細さも感じさせる。
「組み合わせの箇所を見て、手の込んだ仕事をしていますね、とよく言われます。確かにこの手法を始めた頃(三年前)は合わせ目の美しさ、丁寧さにこだわっていました。でも今になって思うことは、それではあまりにも職人的ではないか、そんな技術的な面で認められても仕方がない、ということ。もっと『かたち』で訴えかけたいんです。ガツン!と」
六田さんは現在の自身の作品に対して、半ば否定的に、不満足げに説明をする。技術や手法が先行するのではなく、作家としての自分の表現である『かたち』でガツン!と震わせたい、と言う。
六田さんと石彫との出会いは、まだ高校二年生の時だった。ちょうど「自分」や「自分の人生」について誰もが思い悩む多感な時期だ。もともと美術書を見るのが好きな少年だった。平面的で裏から見ると何も無くなってしまう絵画より、立体的でどこから見てもそこに存在する彫刻が好きだった。両親に相談して、近所の石彫教室に通うようになる。そしてそこで石の強さや抵抗感に魅力を感じて、石彫の世界に引き込まれて行く。
大学は沖縄芸大に入学。しかし六田さんによると「ほとんど勉強はしなかった(笑)」というほど、沖縄の自然と南国ムードに身も心もどっぷりと浸かる。それでも卒業後は東京に出て来て、日大芸術学部に研究生として入学。研究課程を修了後、現在のバンクハウスに仲間入りした。「沖縄でののんびりとした生活と、日大で学んだことのどちらも僕の作品には作用している。温和な人間にもなれました」と笑う。
ところで、具象(人物)彫刻を見て、いつも不思議に思うことは「一体この人は誰なのだろう?」ということだ。いかにも単純で素人くさいこの疑問を、六田さんにも勇気を持ってぶつけてみた。
「僕の場合はモデルは使いません。ある特定人物や人間の個性、感情を表現しようとも思っていない。僕の伝えたいものはあくまでも『かたち』。人間は形あるものの代表です。造形的に面白い対象で、表現する要素も多い。だから人物を彫っている。人間の形と石の強さを借りた『かたち』でガツン!です」
最後まで「ガツン!」にこだわる六田さんだが、それは言葉では表現し尽くせない『かたち』を、今も探している途中だからだ。その『かたち』を見つけた時のガツン!に、今から大いに期待したい。
◎六田貴之(自宅) 埼玉県川越市広栄町1‐12
TEL・FAX049‐247‐0970
◎バンクハウス 埼玉県坂戸市青木771‐2
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