| プロフィール |
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「まだ十代前半の頃にテレビのある番組で、ヨーロッパのどこかの国の古い街並みをとても新鮮な感覚で見たのを覚えています。なぜそんな感覚になったのか? それは日本の街にはない石の重量感、力強さを感じたから。以来、石に対して興味を持つようになり、石彫を始めたのもそれがきっかけになっていると思う」 国内外で広く活躍する石彫家、岡野裕さんが少し照れくさそうに『石』に対する想いを話し始めた。最近になってはやしているヒゲがにこっと笑う口元を飾る。時折それを撫でつける石彫家らしい大きくてゴツイ手が、岡野さんの内に秘めた力強さを象徴している。石と向き合ってできた「仕事をする手」だ。 「日本では石と人間との距離が遠い。身近に感じられないから、石文化も発達しない。特に今日の日本ではお墓さえも外国でつくってしまい、ますます石と日本人は疎遠になっているように思う。ヨーロッパでは古くから石彫家が街づくりや墓づくりを手掛け、創造力あふれる素晴らしいものを残している。今こそ私たち石彫家が、日本の石文化の発展のためにも、より広い分野で積極的に仕事をするべきです」 そう話す岡野さんは、もうすでにその第一歩を踏み出している。ある墓石小売店と提携し、お墓のデザインを提供しているのだ。 「日本人にとって最も身近な石とも言えるお墓が、いつの間にかあまりにも冷たいイメージになってしまった。従来のお墓がズラリと建立されているようすは、とても自然破壊的で威圧的。もっと想いの詰まった温かいお墓をつくりたい」と岡野さん。思わず「お墓を建てるなら彫刻家に!」と賛同したくなってしまった。 ところで、岡野さんにとっての『石』とは一体何なのだろうか? 「石の持つ半永久性に魅力を感じます。人間の力ではどうにもできない強さです。その石の強さで何かを表現すれば、それは人間の生きた証となる。私にとって石とは、人間の存在を記録するためのもの」 なるほど、この言葉は石彫作品だけでなく、そのまま墓石にも当てはまることだ。「お墓こそその人の生きた証で、想いを象徴するべきもの。画一的で冷たいイメージになるはずがない」と伝えようとしているのかも知れない。 そんな岡野さんの作品にはぬくもりを感じさせるものが多い。『坐れる彫刻』シリーズと『人に気付かれないように移動する方法』シリーズである。前者はもう十二、三年つくり続けている。「彫刻は触感芸術であるべき」と言う岡野さんらしく、彫刻展などでも実際に座ってもらうのが一番うれしい。どうしたら座りたくなるかを考えながら制作する。 『人に気付かれないように……』は比較的最近に始めたシリーズで、人と自然とのあり方をメッセージとしている。自然界には人間が気付かない不思議な生命体がいて、その存在を石彫でわざと気付かせることで、自然の大切さを訴えようとしているのではないかと思う。タイトル同様、作品を見れば何となくおかしくて、優しくて、やわらかい気持ちになる。 岡野さんの仕事場、アトリエ・ファチェンドは造形大学時代からの友人である小野寺優元さんと、乾純信さんとの共同運営。優しい気持ちを思い出させてくれるようなアトリエだった。 ◎岡野裕 自宅=東京都文京区千石2‐22‐4 TEL03‐3942‐0327 ◎アトリエ・ファチェンド 埼玉県比企郡鳩山町泉井233‐2 |
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