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石の彫刻家の | ![]() |

「小学校4年生の夏休みに紙ねんどでマンモスをつくったらものすごくほめられたんです。絵はもともと好きでよく描いていましたが、いま彫刻(立体)をやっているのは、そのマンモスがきっかけだったのかも知れませんね(笑)」 関門海峡の潮風が感じられる福岡県の門司、九州自動車道沿いにある約300坪のアトリエで、坂井さんは話しはじめた。どっしりとした体格からはちょっと想像できなかったほほえましい昔話だ。 「親戚のおじさんが造園をやっていたから、石に触れる機会は多かった。そのせいか、石をはじめたばかりの十代のころでも、まわりの人からおまえはやけに石になじんでいるな≠ニか言われました。確かに自分でも石に触れていると、そのころから安心感みたいなものを感じていた。木やねんどでかたちをつくるのは、そのスピード感が向いていない。石はこっちが石に合わせないとダメでしょう。それがいい」 坂井さんは学生時代から自分の石の作品で生活をしていた。その創作活動はなかなかの順調ぶりで、博士課程修了前に埼玉県の秩父にサカイ石彫工房を開いたほどだ。2001年の暮れに故郷の門司に戻るまでは、秩父を拠点に活躍していた。 「秩父から門司に戻ってから、作品もかわった。中央から離れて、ここは関門海峡もあって潮の流れとか風のにおいとかを感じるし、肩の荷がおりたという感じかな。いまはいい意味で力を抜いて作品をつくっています」 坂井さんの作品集を見ると、いろいろな“かたち”が目に飛び込んでくる。聞くと、「かたちには特にこだわらない」と坂井さん。さらに、「私は石を“地球の歴史”“宇宙の記憶”と思っていて、やわらかくてあたたかいものだと感じています。そういう石が内在している温感を引き出すかたち、表現が好きです」と話す。特に門司に帰ってきてからは畑で野菜をつくるようになったことなども影響して、人間には考えられない、無作為的なイメージがわくようになったとも言う。 「学生時代に先輩から、“石とくらす”ということを教えられました。いまでもその教えは守っています」 “石とくらす”…? つまり簡単に言えば、すぐにつくらないということだと、坂井さんは教えてくれた。原石がアトリエに来ても、しばらくは置いたままにしておいて、石を眺める時間をつくる。その時間は石と対話する時間でもあり、自分自身を掘り下げる時間でもある。それが“石とくらす”ということ。石のリズムに合わせて、ゆったりと時をすごす。そしてその結果として得られたなにかが作品にあらわれ、魅力となる。実際にいま坂井さんのアトリエには届いたばかりの六方石の原石がドカッと並んでいるが、「まだまだつくらない。これからゆっくりね」と笑う。 「原石も、すでに切断されたスクエアなものより、玉石のほうがインスピレーションを刺激される。石は自然に近いほどなにかを語りかけてくれる」 そうやって生まれてきたかたち≠ェ坂井さんの彫刻なのであろう。そしてその彫刻は置かれている空間を揺るがし、みる人、触れる人のイメージを拡大させるエネルギーに満ちている。 「人間はイメージの積みかさねで生きていると思うんです。いままでの生き方が、その人のこれからの人生をも当たり前のように左右する。私は自分の作品で、その人が積み重ねてきたイメージに懐かしくたち帰ったり、また、新たなイメージへと変化させていきたいと思っています。鑑賞者の人生に少しでも遊び心や心地よい揺らぎを与えたい」と坂井さんは話してくれた。 ◎サカイ石彫工房 福岡県北九州市門司区畑26−1 http://www1.megax.ne.jp/nakaya |
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![]() ![]() ![]() ▲『ぐる・ぐる』(黒みかげ)。門司に戻ってからの作品で、関門海峡の潮の流れから生命のうねりを表現。サイズは左奥がD230×W750×H650、手前がD200×W750×H650。このタイプを北九州市立美術館が購入した。 ![]() ▲『いぬ』(小松石、H900)。 ![]() ▲『軌跡』(美祢産大理石)。第2回美祢国際大理石シンポジウムで制作。D1400×W4200×H2800。ニュータウン来福台(山口県)に設置。 ※作品写真は坂井氏提供。ほかにも“葉・菜シリーズ”や“石あかりシリーズ”などがある。ホームページでご覧ください。 |