プロフィール







――《自分は一体ナニモノなのか…》
 「僕は常に自分自身に問い掛けている。いまだに答えを見つけられなくて、かなり苦しいですね。作品をつくるという作業だけを重視するのは僕の考えとは違う。それ(作品)をつくる自分とは一体ナニモノなのかを問い詰めて、自分を追い込み、石に向かい彫り込んでいく。自己を把握するためのその一連の作業の方が僕にとっては最も大切なことです。こうして石を彫りながらも、ずーと考えていますよ」

――《自分は一体ナニモノなのか…》
 茨城県大和村にある、とある石材業者の工場敷地内に設けられたアトリエにて、彫刻家鈴木典生さんは真剣な表情でそう話した。七月下旬の猛暑の中、黙っていたって汗が流れる。四人の石彫家が中心になって使用するアトリエには、ビニールシートのほかに太陽を遮るものは何もない。頭の中はもう飽和状態だ。「暑いねえ」の言葉がぐるぐる回っている。

そんな中を、こちらから取材をお願いしたにもかかわらず、鈴木さんは快活に動いてくれている。制作風景の撮影にもテキパキと道具を替えながら応じてくれる。全身に汗を流して「アッツイねえ」と笑いながら目をつむる。ウインクではない。汗がしみるのだ。それでも「汗をかきながら働けるのも、この仕事の魅力ですヨ」と明るく話す。冗談まじりに「今年の夏こそはアトリエでダイエット!」なんて言葉まで出る。

そういう外見的な印象とは裏腹に、モノをつくる人らしく鈴木さんの内面は奥深い。冒頭にあるように《自分は一体ナニモノなのか、自分は一体ナニをしたいのか…》を常に自問自答し、自己を把握するために自分の内なる世界を往復する。悩み、苦しみ続けて、それでも答えを見出せず、そのフラストレーションが石に挑んで行くエネルギーにもなる。 「まだ自覚できていない自分の中の可能性を、もっと引き出したい。僕の作品はまだまだ未熟です」
 
そんな鈴木さんの作品は、自己を守るという《防衛本能》を表わしたものが多い。これは彫刻を始めてから一貫しているテーマだ。形状は様々だが、等身大の自分をスッポリと覆い守る『シェルター』(鈴木さんが好んで使用する作品名)を築く。

「いま、人間の防衛本能(自己防衛力)は弱まりつつあると思う。それは僕も同じことで、自分のことすらよく分からずに、ともすると生きていくことが曖昧になってしまうのだから、これでは自分を自分で守ることは難しい。だから僕の作品は、自分の身体を基準にした殻をつくり、その中に閉じこもって自分を守ろうとするものが多い」と話す。強固な石のシェルターに守られていれば、安心して自分自身の内部へと奥深く入り込むことができる。そうすれば、自分のことも少しずつ分かってくるかも知れない。
 鈴木さんはすべてにおいて自分に置き換え話していた。しかし実は人間の内面的な脆弱さを、作品を通じて暗に表現しているのではないかと感じる。

さて、鈴木さんの最近の活動は、大和村一円で開かれる「雨引の里と彫刻」展のような野外彫刻展への参加が中心だ。石種は真壁石などの白みかげ石を多用し、黒みかげ石ではあまり目立たない自然環境との同化・調和を楽しむ。どちらかと言えば、内向的な作風に思われがちだが、その発表の場を個展などの屋内展ではなく、屋外の大自然に求めるというのが面白い。人間の脆弱な精神世界と、強大な自然環境との対比と同化が楽しめそうだ。

◎鈴木典生
自宅=茨城県つくば市並木3‐17‐21‐201
TEL0298‐52‐5812