プロフィール


石の彫刻家の




「大学の就職活動のときにある企業の最終面接で、“もしも当社に入社しなかったら、どんな仕事がしたい?”と聞かれ、そのときについ正直に“石の仕事がしたい”と答えちゃったんですよ(笑)。就職先はその企業にほぼ内定していたんですが、その答えで、当然のように不採用になりました。でもそれが正直な気持ち。いまは良かったと思っています」

彫刻家、白川俊輔さんは鰹骭ヒ石材加工所(城戸津紀雄社長)の工場で仕事の手を休め、そんな話をしてくれた。ちょうど三十歳、これからが楽しみである。

白川さんと石との出会いは大学進学を考えたときにさかのぼる―といっても、実際に石を彫ったのはもっと後になってからのこと。“最初の出会い”は美術大学へ進もうと思って入学案内のパンフレットを見たとき、その表紙にノミで石を彫る写真が掲載されていた、というだけのものである。しかし、それでもその瞬間、「あ!」と思ったという。なにかが白川さんのなかを「ビビビっ!」と走ったみたいだ。

「それまで石の彫刻のことなんてまったく知りませんでした。でもその写真を見たときに、なぜか石にひかれたんです。いまだに不思議な感覚です」

だから大学の必修課程で、粘土や木材を習っても、気持ちは常に石へ向いていた。少しでも時間があれば石に触れるようになっていたという。

「石はいろいろなことができる。磨いたり、ノミ跡を残したり、叩いたり。そういう仕上げによって石の表情がかわっていく。それがおもしろい」

結局、就職先は本人の正直な希望通り、鰹骭ヒ石材加工所に決まった。いまは同社の工場で仕事をこなしながら自身の作品をつくる。石材店の仕事といえば、お墓などの図面仕事がほとんどである。決して間違いなど許されない。

「いろいろな道具、いろいろな石を知り、おかげで確実に加工技術は上がっています。それだけ自分の作品における表現の幅も広がっていると感じます」

では、白川さんの表現とはどのようなものなのであろうか。

「その風景にとけ込むかたちを目指しています。特に自然のなかに置きたいですね。だから基本的にはやわらかいもの。でも軽いものではなく、重量感があるもの。それは石の持つ質感を生かしたかたちと思います。石には自然の重みがありますから」

石の質感を生かすために、自然の肌と加工した肌との対比に配慮する。当然その割合は、作品のかたちや置く場所、そして石によって変化する。機械の跡を多く残せば、それだけ自然の風景から遠ざかる。だからできるだけ手による仕上げにこだわる。例えば「ノミで仕上げたボコボコ感は好きですね」という。

「城戸社長が美術に理解が深く、大変感謝しています。社長から“あかり”やオブジェなどの制作の依頼を受けることもあり、とてもやりがいを感じます」

同社は石をふんだんに使用したレストランやチャペル、ブライダルホールなどを経営している。いずれも木々にかこまれた清々しい雰囲気が人気で、その木々のなかに白川さんの作品はしっくりと置かれている。

「かたちは突然生まれます。デッサンはせずに、そのまま紙粘土でマケットをつくります。マケットをつくりながら石種も考えたり、イメージを掘り下げていきますが、その段階では全部をつくらない。最終的に石と向かい合って、その石を感じながらつくっていきます。そうすると最初のイメージを超えるものができることもあり、そのときはとてもうれしい。それが石のおもしろさかも知れません」

今後の活躍にも大いに期待したい作家だった。




◎鰹骭ヒ石材加工所
福岡県京都郡みやこ町惣社956-1
http://www2.ocn.ne.jp/~kidoston/






作品『進化・U』。ノミで仕上げた面と磨いた面との対比がおもしろい。石の重量感を主張しながらも木々のなかに馴染んでいる




作品『森林の心・V』




作品『無限の始まり』(写真提供:白川俊輔氏)