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アキホ・タタ――初めてその名を聞いたとき「珍しい名前だなぁ」と感心しつつ、一体、国籍は日本か否か、性別は男なのか女なのか、正直告白すると分からなかった。もちろんその名前と作品は度々拝見していて、有名な彫刻家とは知っていたが、これまで一度もお会いしたことがなかった。しかし今回、本人に直接会って、ようやくその謎が解けた。
答えは、国籍が日本で、性別は男性であり女性でもある。つまり夫婦二人の名前で、タタ(多多)さんがご主人、アキホ(明甫)さんが奥さんだった。苗字はこの地に多い「太田」で、以前、当地の有名な彫刻家空充秋氏が「多多」と命名したという。「この辺は石が沢山あるし、作家の名前はそれくらいインパクトがあったほうがいい」との理由らしい。まさしく、その思惑にまんまと引っかかってしまった。
インパクトは名前だけではない、作品にもある。一番の特徴は彩色を施す点だろう。ほとんどの作品に赤、黄、青の塗料が色鮮やかに色づけされている。それはなぜ。「古代文明の壁画には動物の絵なんかによく色が塗ってあるでしょう。心情としてはそれに近いかも知れない。石だけでは表現しづらいから…」と話す。さらに詳しく説明を加えるなら、作品テーマ「Fantasia」の一節を紹介しよう。
――父親が山石屋だったタタさんは、子供の頃、石切場で育ち、山の中を駆け回っていた。ある日、遊び疲れて大きな岩の上でうとうとしていると、夢の中で大きな岩が話し掛けてきた。『オーイ、おれはずっとここで眠っていた。おまえが俺の腹の上でイビキかいて眠るから目が覚めたよ。起こした代わりにいろんな世界へ連れていってくれ。頼んだよ』と、そんな昔の夢が今になって蘇ってきたという。
つまりファンタジアの世界とは「太古の眠りから目覚めたアート」なのだ。彩色への思いはこの原始的な願望に根ざしたものなのかも知れない。
塗料はアクリル系の壁画塗料を使用、その表面にフッ素樹脂でコーティングを掛ける。主にアキホさんの担当だ。タタさんとの結婚が1984年、その後、彫刻に興味を抱いて自分の作品も幾つか作ったが、91年頃から二人で共同制作するようになった。
これまでの作品は、地元の牟礼町・庵治町ほか、北は岩手から南の宮崎まで全国に点在する。具象ではヒトや動物、楽器などを題材にしたものが多い。また石の中に空缶や車を埋め込むなど一種の文明批判を表現した作品もある。「しかしパブリックアートは作家の個性が極端すぎると採用しづらいので、人によってメッセージを伝えにくい側面もある」という。公共の場に相応しいかが問われるのだ。したがって常に自己満足に終わってはいけないとも考える。
最近はそんな思いもあってか、第三者を作品作りに巻き込むコラボレーション(共同制作)にも挑戦する。たとえば石でタイムカプセルを作る試みでは、小割りした石面に子供たちに好きな絵を描いてもらい、再びそれを閉じて封印した。また石以外の素材では、近くの山で集めた竹を使ってふた葉を作った。葉の部分に子供たちが自由に彩色し、それを公園の丘に植えるという「ふた葉作戦」だ。二人による共同制作を更に拡大したものがコラボレーションであり、そこには未地の可能性が溢れているようだ。
◎アキホ タタ
住所=香川県木田郡牟礼町3720‐254
TEL=087‐845‐9511
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