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これまでこのコーナーでは主に石彫家の人達を紹介してきたが、今回は石職人に登場してもらう。一般に石彫家ら作家が作ったものは「作品」、職人が作ったものは「商品」と呼ばれる。まれに石職人が作品を作ることもあるが、そのように呼び分けることが多い。「作品」は作家の表現手段として生まれ、「商品」は消費者の要求を満たす機能や性能、デザインを有す。もともと性格が異なるモノなので単純に比較することはできないが、もし二つに共通する評価があるとすれば、それは本人が設定した目標にどれだけ近づけたかということ、ただそれだけだ。
香川県牟礼町の山田浩之さんは昭和42年生まれ。「お墓や灯篭を作るよりカッコイイ」。それが石彫を選んだ動機だった。当時は墓石の方が実入りが多く景気も良かったので、周りからは冷ややかな目で見られたが、やがて彫刻の分野で腕を磨いて今は一目置かれる存在となった。現在、山田忠石材店の代表で、石材加工・石張り・石積み作業の一級技能士でもある。
浩之さんには独特の作風がある。ひと言でいえば「カワイイ系」。幼稚園から小中高生、OLまで女性の誰もが「キャー、これカワイ〜」と、つい手を伸ばしてしまう作風なのだ。十五年前、石のもつ「重い、固い、値段が高い」というイメージを払拭したいと思い、女性に喜ばれるものということで、庵治のサビ石でひよこを作ったのがきっかけだった。それが大変な評判で、その後、フクロウ、フグ、招き猫など「カワイイ系」のキャラクターを幾つか作ってきた。何と皇太子さまも公務で高松にいらしたとき、そのフクロウをお求めになられたという。
昨年は牟礼小学校のシンボルゆうかりの木をモチーフにしたマスコット「ゆうかり君」を制作した。牟礼町は教育・文化に熱心な町として知られるが、何と小学生全員が学校で名刺をもらい、お互いに名刺交換をするという進歩的な取り組みまで見られる。その各小学校にはそれぞれ校章とは別に親しみやすいマスコットがあり、その石像を校内に設置することになったのだ。そして浩之さんの作風を活かしたカワイイ作品が完成した(写真下)。地場産業と地域社会との理想的な在り方を示す例としても注目されている。
他にもいろいろあるが、どれも庵治石の特徴がうまく生かされている。各種仏像ほか野球のグローブやボールなどは実にリアルな仕上がりだ。ある部分は小叩きで柔らかい質感を再現し、ある部分は研磨してその陰影を表現する。またあの有名な小便小僧を日本の子供の顔で作るなど発想や着眼点も面白い。自分の持ち味や感性を余すことなく発揮している。先日はテレビ東京の人気番組TVチャンピオンの「全国石職人選手権」にも出場し、その繊細な技を披露した。
とはいえ石職人としての立場は忘れない。「職人には必ず納期が付きまとう。体調が悪いとか、気が乗らないなんて言ってられない」。通常10日掛かる仕事も、急ぎとなれば4日で仕上げなくてはならない。「全く妥協がないといえば嘘になるが、限られた時間内でいかにベストを尽くし、どれだけ納得できるかだ」という。「いつか父とひとつのものを一緒に作ってみたい」。それが浩之さんの密かな願望だ。
この日はお地蔵様を仕上げていた。心の中で「良い仏像になれよっ」と念じながら手を進める。原石から削りだす始めの工程は苦痛だが、ある程度の形になってくると自然と手が動くようになるという。時には荒々しく、時には優しく、浩之さんの魔法によって石に命が吹き込まれていく。
◎山田忠石材店
所在地=香川県木田郡牟礼町牟礼2699
TEL=087‐845‐1921
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